「マルさんは知ってたの?」
ルナの問いにマルゴーが答えるまえに、ロキアルドが言う。
「知ってはいたが、何もできなかったってとこだろ?」
4人の眼下では、シェナロダはカイリンの元で訓練をし、知識と新たな力を蓄えていく様が見受けられる。
そして、堕天使の子宮が関わって良そうな事案を処理する担当にまで任せられ、その過程で偶然出会ったリビドーと契りを結び、その潜在能力を覚醒させていった。
瞼を閉じようとしても強制的に見せられる、その光景をロキアルドは怒りを露にし、ルナは涙を流しながらも、その双眸に刻んでいた。
孤独の中に影を広げ・・・
傷つきながらも闇を彷徨う・・・
紅の眼に映る敵を見ては、その先にあるルナとの幸せを取り戻すために。
禍々しい血を浴びながらも、決して邪悪にも染まる事のない漆黒の強き姿。
数々の苦痛・苦悩を受け止めて、それでもその歩みを止めなかった。
異形の姿になろうとも全ての元凶を打ち滅ぼそうとする覚悟もあった。
その光景も全て終わり、マルゴー達の五感は戻り、周りは先の異空間となった。
そこでは暗黒の魔術師がシェナロダに激痛を与え苦しめていた。
暗黒の魔術師の右腕が無数の触手となり、首を絞め、手足とリビドーを侵食するかのように同化している。
口に溜まった血が声を出すことすら許さず、苦しさを一層に増させる。
「強い精神力だな・・・こいつも君たちも・・・」
言葉を発するよりも、先に体が動いたのだろう。
マルゴーがいっきに距離を詰めて、暗黒の魔術師にセングチュアリから、プレッシャーをかけ、ラッシュで間合いを詰め、バスターを放ち、ブレストで貫いた。
その猛攻に、耐えれるわけもなく、体勢を崩し深手を負う。
攻撃を終えるマルゴーの後ろから姿をだし、死角からロキアルドはブランディッシュで何度も斬りつけ、勢いそのままでパニックで暗黒の魔術師の右腕を斬りおとした。
本体から離れた仮初めの腕は触手共々消えて、シェナロダは解放された。
その傷を癒そうとイオが近づきヒールをしようとするが、シェナロダはそれを制止した。
バーサクは極限まで発揮されており、イオですら近づく瞬間に恐怖した。
「イオさん・・・このままで良い・・・」
そういうとシェナロダは体勢を立て直し、マルゴーとロキアルドと共に暗黒の魔術師に仕掛ける。
鬼気迫るとはまさにこのことを言わんばかりに、3人の猛撃は緩みはしない。
ダメージを受けながらでも反撃を緩めない暗黒の魔術師もまた、凄い。
「流石だが・・・シェナロダだけ差し出せば無事に帰れたモノを・・・」
暗黒の魔術師はこの攻守の中で喋りながら呪文を唱えていた。
残った左腕を掲げ、すぐに下げると、協力な衝撃波と共に無数の氷の刃が襲いかかる。
シェナロダ達、戦士3人はルナとイオに襲いかかる刃を全て撃ち落とす。
そして、この攻撃が止むこともなく、何分をも続いた。
こちらの攻撃を許さないという状況なら、あと少しで暗黒の魔術師を追い詰めることもできる。
しかしながら、シェナロダ達も攻撃を続ける余力もなくなり、深手のシェナロダが意識が失いかける瞬間に、リビドーの意識が戻り、刹那に灼熱の炎を吐き出し刃を防ぐ盾となった。
炎を出し続けるリビドーは無論喋れるわけもなく、シェナロダの体を借りて話し始めた。
「脱出するんだ!」
そこに疲労したロキアルドが言い返す。
「試行錯誤したが、全員は無理だ!」
「ミスティックドアを出せ!」
「そんなのもう試しましたよ! それでも駄目だったんです!」
「もう一度試すんだ・・・」
反論したイオを諭すように、マルゴーが指示すると、イオは魔法の石をとりだし呪文を唱える。
だが、ドアは魔法の扉は開かれることはなかった。
しかし、魔法の石は砕けて塵となり、それがロキアルドのグリュンヒルに付着した。
「今なら次元を斬れる! やれっ!?」
リビドーが叫ぶのはロキアルド宛ではなく、グリュンヒルにと声が飛ぶ。
呼応したようにグリュンヒルに付着した塵が不思議な力を放つ。
促されるままに、ロキアルドは大きく剣を振るった。
斬られた空間は光を放ち、拡大されていき、人が出入りするには問題ない大きさとなった。
「いけえええええええええええええ!!」
リビドーの叫びに、マルゴーが言い返す。
「リビドー! シェナロダを置いてはいけん!」
「シェナロダの気持ちも汲んでやれ!」
「くっ・・・」
苦渋の表情をするマルゴーの横でロキアルドが決死の覚悟で剣を構えてシェナロダの元にいく。
「マルさん、こいつを連れていけ! 私が殿を!」
「駄目だ!」
リビドーもまた必死だ。
「くだらないやり取りしやがって・・・」
その言葉から、暗黒の魔術師かと思ったが、紅のバンダナから癖っ毛がでていている海賊が空間の穴から飛び出すように姿を見せた。
「このアリューネス様が来た以上! 誰1人、死なせるか!!」
その後ろには、白いセフィロスを被った、淡い碧の双眸を覗かせる魔法使いがいる。
「マスター、マルさん。遅れながらも推参です!」
「アリュ! ティス! 良く来れたな!?」
「ティス遅いぞ!」
2人の姿に感激するロキアルドに、冗談を言えるほどの余裕を見せるイオ。
ここにきてありがたい援護である。
「ロキアルド! 暗黒の魔術師は私に任せろ・・・」
そういうと、アリューネスは光り輝くオーラに身を包んだ。
スーパートランスフォームだ。
「分かった。ティス、撤退だ。ここはアリュに任せるぞ!」
ティスはリビドーが解いた炎から襲ってくる刃をマナリフレクションで跳ね返していく。
深手のシェナロダをイフリートによって運び出した。
その返って行く、刃より早くアリューネスは光となり暗黒の魔術師に攻撃を仕掛けた。
「久しぶりだな! あいつの仇・・・取らせてもらうぞ!」
デモリッションにより、暗黒の魔術師もその動きに追いつけず、連続で打撃を受けて舞い上がる。
「あのときの騎士か!? 今日は本当に厄日なのだな!」
「命日にしてやってもいいんだぞ!!」
ドラゴンストライクの顎が暗黒の魔術師に喰らいつくも、暗黒の魔術師も魔力を一気に放ち、ドラゴンストライクを打ち消す。
禍々しい光と怒りの雷の光が激しく衝突しては、粒子が周囲の闇に飲み込まれていく。
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テーマ:メイプルストーリー杏 - ジャンル:オンラインゲーム